REPORT

2021.01.12

介護のリーダーは、日本のリーダーになる|介護の仕事研究セミナーVol.1レポート

株式会社Blanketが取り組む、介護に志を持つ若者世代が活躍できる環境づくり

11月29日、介護の仕事研究室「セミナーVOL.1 介護のリーダーは、日本のリーダーになる」を、株式会社Blanket代表取締役の秋本可愛さんを迎えて開催しました。
新たな視点で介護にアプローチする方をゲストにお招きし、介護に対するイメージや思い込みをアップデートする学びの場。今回も多くの学生のみなさんにオンラインでお集まりいただきました。


当日のセミナーではFACE to FUKUSHI共同代表の河内崇典と、同じくFACE to FUKUSHI事務局の池谷徹がファシリテーターとして進行。
今回ご参加いただけなかったみなさんと、ここでのレポートを通じて学びを共有できれば幸いです。

大学での起業サークルメンバーのおばあちゃんの認知症が、介護に携わるきっかけだったという秋本さん。大学卒業後に株式会社Join for Kaigo(現、株式会社Blanket)を設立し、現在は介護に志をもつ若者コミュニティ「KAIGO LEADERS」や、採用・育成支援などの人的課題の解決をめざす「KAIGO HR」を運営されています。
今回は、秋本さんが肌で感じた素晴らしい実践とともに、思わずワクワクしてしまう介護の魅力について語っていただきました。

◯介護に関わるきっかけ

はじまりは、認知症のフリーペーパー。

こんばんは。株式会社Blanket代表の秋本可愛と申します。
まずは簡単に自己紹介なんですが、「KAIGO LEADERS」という4,000人ほどの規模の介護の若者コミュニティを運営しています。
株式会社Blanketは今8年目になるんですが、大学卒業後にそのまま独立しているので、私自身の社会人経験も8年目ということになります。


今でこそ「介護」をテーマにお話しさせていただいていますが、実は大学2年生までまったく介護に興味がありませんでした。大学は商学部マーケティング学科で、福祉も専攻していないところからスタートしています。
大学では、とにかく楽しいことなら何でもやろうというオールラウンドのサークルに入り、ライブハウスでパーティーしたり、運動会を企画したり。


ただ、大学2年生の頃から「このままやってても成長しないかも」という漠然とした意識をもちはじめ、インカレの起業サークルに入ったんです。そこにいたメンバーのおばあちゃんが認知症で、自分のことを忘れられた原体験を持っていました。
そこで「認知症による悲しみを減らせるような取り組みがしたい」と、チームで「孫心」というフリーペーパーを発行。
けれど、そもそも私自身が認知症のことを知らないので、この活動が効果的かどうかもよくわからない。
そこではじめたのがデイサービスのアルバイトでした。

若者の関心をもっと介護に!大きな想いは、小さな飲み会からスタート。

初めての介護の現場でしたが、とても楽しかったです。いっぽうで課題もたくさんありました。
あるばあちゃんは、夜になると必ずお祈りをして「はやく自分を迎えにきてください」と言ってるんですね。
その姿を見たときに、私たちはお誕生日を迎えるたびに祝福されているけれど、人生の後半に生きていることが申し訳なく思ってしまう状況って、なんだかすごく寂しいし悲しいと思いました。

また、私が関わっていた現場はスタッフの入れ替わりが激しい事業所でした。
さらに、ご家族さんが介護放棄されたり、一部虐待のようなケースもあり保護させていただくこともあったりと、ご家族さん・利用者さん・職員たち関わっている全員が苦しんでいる状況を、現場に入って感じることもありました。

どうすれば介護の課題を解決できるんだろう。どうすればみんなが幸せになれるんだろう。
そんなことを考えはじめて気づいたことは、「介護領域に対する若者の関心が低いこと」でした。
もっと若い人たちが興味をもてたり、いっしょに活躍できる機会をつくっていきたい。

そんな想いではじめたのが「介護系アクティブ学生交流会」。とってもダサい名前で、しかも最初はただ飲み会をしていただけでした(笑)それから「HEISEI KAIGO LEADERS」に発展し、現在の「KAIGO LEADERS」にいたります。

介護がより多くの人に関係してくる時代に、さまざまな視点で介護に関わる人たちを増やし、活躍できる環境をつくりたい。そんな気持ちを込めながら、今日は私自身が感じる介護の魅力と面白さを5つの視点からお話ししたいと思います。

◯私が感じる介護の魅力と面白さ❶

介護の仕事は人の見えづらくなった可能性にもう一度光をあてる仕事。

私が介護の現場で一番苦戦した認知症のじいちゃんの話です。
本当にいろいろありましたが、なにより夜に寝てくださらないことが大変でした。
ある夜0時くらいに、「そろそろ寝ませんか」とお声かけすると「お前先に寝ろよ」ってじいちゃんが言ってきたんですね。「いやこっちのセリフだわ」って思ったんですけど(笑)

しかたなくじいちゃんの隣に布団を敷かせていただいて、電気を暗くして寝たふりをしたんですね。
そしたらなんと、しばらくするとじいちゃんも自分の布団に入って寝てくれたんです。これにはとても驚きました。
そして、「私が寝るのを待っていた」ということに気がついたんです。

ここに来る前は家族のみんなが寝静まるのを待っていたり、帰りを待っていてくれる人だったのかな、ということに気づけたとき、じいちゃんとの関わりかたや関係性が変わりました。その後は寝ていただくときもスムーズに。
じいちゃん自身も、本当はずっと「先に寝ろ」と言いたかったけれど、自分の想いを言葉で表現することが難しくなっていたのかもしれません。
その人の見えづらくなっている可能性に、もう一度光をあてることができる。
それは介護の仕事の尊くも大きな魅力だと思います。

◯私が感じる介護の魅力と面白さ❷

介護が必要になっても活躍できる環境をデザインすること。

おそらく日本で一番有名な介護事業所の「あおいけあ」。神奈川県藤沢市にあります。
(写真をみながら)これはばあちゃんたちが地域のゴミ拾いをしている写真ですが、全員認知症なんです。

「天気のいい日にお散歩に行きませんか」と言っても、「だるいからあんた一人で行っておいで」と、介護職時代の私はよく断られていました。けれど、「地域のこどもたちのために、ゴミ拾いをいっしょに行っていただけませんか」とお声かけすることで、「仕方ねえなあ」とか言いながらばあちゃんたちも喜んでゴミ拾いに行ってくださるんだとか。

あおいけあの加藤さんという方の言葉が衝撃でした。「介護職の役割は、高齢者のお世話をすることじゃなくて、地域のなかでいかに活躍できる環境をつくれるかが介護職の仕事なんだよ」と。

これを聞いてハッと思い出したのが、冒頭で話しました「自分が生きてることが申し訳ない」と言ってたばあちゃんのこと。「生きてることが申し訳ない」と言わせてたのは、私が一生懸命お世話しちゃってたからなんだってことに気がついたんです。
お世話になりまくってるから申し訳ないと思ってしまう。同じ認知症のばあちゃんでも、こうやって役割をもっていたらイキイキと暮らせることを学びました。
介護が必要な人たちを単に支援の対象にするのではなく、いかに活躍できる環境をつくれるかが、これからの福祉の仕事や関わる人たちに求められている。これを知ったときに、介護はとても面白いと思いました。

◯私が感じる介護の魅力と面白さ❸

介護・福祉から、誰もが居心地の良い地域がうまれている。

3つめは今の話にもつながってくるんですけど、介護や福祉から誰もが居心地のいい地域がうまれているという実感があります。
石川県にある社会福祉法人沸子園。西圓寺という廃墟になったお寺を改装し、高齢者のデイサービスと障害者の就労支援、放課後等デイサービスを運営されています。
(写真をみながら)こんな感じで見た目はお寺なんですが、中に入るとデイサービスの利用者さんも地域の人たちもいるので、誰がどんな人なのかよくわからない状況です。
カフェや温泉があり、温泉は野田町の方なら無料で入ることができるようになっています。
私の西圓寺の好きなところは、カップルがデートでここへ来てご飯食べていたりするくらい、誰が来ても自然にいられるところです。
頚椎を損傷して首の可動域がほぼなく、寝たきりで車椅子の男の子がここにいたんです。
そこに認知症のばあちゃんがその男の子に出会うたびにゼリーをあげようとするんですけど、足腰がプルプル震えてその子の口に届かずこぼれてしまう。男の子もおばあちゃんの気持ちに応えようとしていたんです。
そんなことを毎回繰り返すうちに、なんと男の子の首の可動域が広がった!そんな事例もあるんですね。
ごちゃまぜに地域の人たちが集う環境で、一方的に支援されるだけじゃなくて、お互いの関わりのなかから自発的に支援する・されるの関係がうまれていくんだなと感じるお話です。

◯私が感じる介護の魅力と面白さ❹

人生の終わりに伴走できること。

人生の終わりに寄り添えることは、介護の仕事の特権だと思っています。
死に対する恐怖や悲しい気持ちがあるいっぽうで、いかにその人の理想の死を支えられるか。
やりがいのある仕事だとつくづく感じます。
私のひいばあちゃんも特養でお世話になりながら102歳まで生き、最期は家族みんなに見守られて病院で亡くなることができました。ただ、なんで特養で亡くなれなかったんだろう、とは思います。

2040年には167万人が亡くなり、病院の病床数はもう増えないため、約49万人の方々が最期を迎える場所がないという状況が予想されています。
じゃあどこがサポートするのか。おそらくこの課題を担う主要プレーヤーは介護の領域だと思っています。
人生の最期を幸せにするのは、医療ではなく、介護なのかもしれません。

沖縄の、あるばあちゃん。壊死により足を切断をしなければいけないと病院にやってきました。
医療者もご家族もご本人も、切断する意思決定されたあと、このばあちゃんが入っていた介護施設の職員がやってきて、「いやいや、ばあちゃんは絶対足切りたくないと思うんですよね」って、そのお医者さんに伝えてくれたんです。
なぜかというと、実はそのばあちゃんは戦争中にハブに噛まれて動けなくなってる状況で、米軍兵に意思確認もされずに腕を切断されたという背景をお持ちで。自分は腕を切られたことによって不幸だったって思ってる方だったんです。
結果、ご家族と話されて切断はしない決断に。最期は老衰で亡くなられたそうです。
介護職員がその方の理想や想いを知っていた、まさに介護のファインプレーですよね。
その人の価値観や生活を知っているからこそ、人生の最期を幸せにできることもできるんだと思います。

◯私が感じる介護の魅力と面白さ❺

人に向き合う仲間がかっこいい。

最後に、私が介護に対して純粋に感じる魅力として、人の人生や暮らしに向き合う仲間って、本当にかっこいいなと思っています。
社会のなかでは、自分の力だけでは生活できなかったり、生まれもった家庭環境であったり、予期しなかった病気など、いろんな状況で自分のことを認められなかったり、自分の人生を肯定できなかったり、苦しんでる人が本当にたくさんいます。
その人たちに気づき、その人の暮らしに寄り添っているプレイヤーは本当にあたたくて、かっこいい。

私がこの領域に入ってよかったと思うひとつは、かっこいい仲間がたくさんできたこと。
介護・福祉の仕事はまだまだ可能性だらけで、いろいろ課題も山積みです。
けれど、フリーランスの介護士をしているKAIGO LEADERSメンバーは、めちゃくちゃ活躍していて、まだ20代ですけど月収50〜60万くらい稼いでるんです。つまり、仕事の幅も可能性もまだまだつくっていける領域だということ。
このあと質問も含めてみなさんといろいろお話しできたら嬉しいなと思ってるんですけど、個人的にはぜひ介護・福祉の領域の仲間になってほしいなと思っています。
仲間になったあかつきには、まだまだこれから新しくつくっていったり、変えていったりしなければいけない介護の領域で、自分たちのほしい社会をいっしょにつくっていけたら嬉しいです。

◯質問/感想など

できるかできないかじゃなくて、やりたいかやりたくないかで選べ。

■福祉業界に入職予定ですが、人と関わるということ自体にびびってます。卒業までに怖さを克服するにはどうすればいいですか?
秋本:何が怖さなんでしょうか?

質問者:病院の相談員として入職予定ですが、人と関わるということを職業にすることだけが目の前にあるという感じで、いざ人の黒い部分を見てしまうと自分に対人援助ができるのか、怖くなってしまいました。

秋本:人は誰しも黒いところがあると思うんですね。目の前の人の黒い部分を見たときに、もしかしたらそこだけが見えてしまっているのかもしれないと思い直してみてはいかがでしょうか。
その人の違う側面を知れると、怖さだけじゃなくなると思うので。
この人こういう人だと判断せずに、もっと知ろうとしてみるとか。そうするとその人のいいなと思える部分も見えてくると思います。
ぜひ一度、判断を保留してみてください。

■最近になり介護に関心を持ちはじめました。学生から介護に関わりたいと思ったときの一歩目のアクションは、やはりアルバイトからがベターでしょうか?

秋本:今はコロナでいろいろ難しいところもあるかもしれませんが、ボランティアを受け付けてるところもありますよ。
短時間だと最近では「スケッター」といって、1時間から、未経験でも参加できるサービスも誕生しています。
お近くの事業所などに、1時間や1日だけでも行ってみるのはいいと思います。

■将来的に起業したいと考えています。秋本さんは起業することへの恐怖心はなかったのでしょうか?

秋本:起業に対して恐怖心がなかったかと聞かれると、ぜんぜん怖かったですね。
でも自分が起業を選択したきっかけとして、学生時代にお世話になった社会人の方に「できるかできないかじゃなくて、やりたいかやりたくないかで選べ」と言われたことにとても影響を受けました。
10代や20代のうちって経験も少ないので、できることが少ないのはあたりまえ。
やったことないけど、やりたいことにチャレンジしていたらできることも増えてた!そんなことはあると思うので、ぜひやりたいという気持ちのままにチャレンジしてみてください。

[ゲストプロフィール]

株式会社Blanket 代表取締役 秋本可愛 氏

1990年生まれ。大学生の時介護現場でのアルバイトを通し「人生のおわりは必ずしも幸せではない」現状に課題意識を抱き、2013年(株)Join for Kaigo(現、(株)Blanket)設立。
「全ての人が希望を語れる社会」を目指し介護・福祉事業者に特化した採用・育成支援事業や人的課題の解決を目指す「KAIGO HR」を運営。
日本最大級の介護に志を持つ若者コミュニティ「KAIGO LEADERS」発起人。
2017年東京都福祉人材対策推進機構の専門部会委員就任。
第11回ロハスデザイン大賞2016ヒト部門準大賞受賞。
第10回若者力大賞受賞。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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