2021.02.09

2040年の社会って、介護ってどうなっているのだろう?|介護の仕事研究セミナーVol.2レポート

日本全国が世界初の「超々高齢」国へ。IIHOEが考える、これからの社会と、これからの介護のあり方

12月13日、介護の仕事研究室「セミナーVOL.2 日本全国が世界初の「超々高齢」国へ」を、IIHOE代表の川北秀人さんを迎えて開催しました。
川北さんは、FACE to FUKUSHIやみ・らいず2(FACE to FUKUSHIの母体となっているNPO)の創業当初からコンサルティングをしてくださっている方でもあり、社会課題解決を担うNPO業界ではとても著名でいらっしゃいます。
今回は、いつもより広い視野で日本のこれからの介護に求められることを知っていただく機会になればと思います。ぜひ最後までお読みください。

●はじめに

世界初の「超々高齢国・日本」を、課題先進国から課題解決先進国へ。

よろしくお願いします。今日のタイトルとしては世界初の「超」じゃなくて「超々高齢国」なんですね、この国は。
その話をしようと思います。
課題先進国から「課題解決先進国」にしていきたいので、もしみなさんがこれから福祉を、あるいは介護をご自身の仕事として選んでくださったとしたら、2040年代の福祉・介護を支える主役になります。
その方々に対する期待をお話しさせていただこうと思います。

●今、何が起こっているか。

3軒に1軒が一人暮らし。2015年現在で。

私は、市民団体の運営をお手伝いをするという仕事をかれこれ25年ほど務めています。
たとえばボランティアやNPOのお手伝いが主な内容でしたが、現在では半分以上が自治会、町内会をどうやって立て直すかという案件に変わってきました。
市民生活が変わると、市民活動のあり方も変わります。
20世紀から21世紀にかけて、あるいは昭和から平成〜令和にかけて日本で大きく変わったのは、よく少子化や高齢化、人口減少と言いますよね。
もちろんそれも大きいのですが、暮らしで最も大きな変化と言えるのは、家族が小さくなったこと。
昭和までは三世代同居があたりまえ。三世代同居が多かったので、介護は家族である程度できました。
子育てもそう。その後、核家族が主流になります。
そして今はどうかというと、2015年に行われた国勢調査の時点で全世帯の35%が一人暮らしでした。
つまり、3軒に1軒が一人暮らしなんです。もはや一人暮らしが前提の社会と言える状態になっているのです。

人口よりも課題が増える時代や社会になってきました。
日本は課題先進国です。全国各地に課題先進地域があります。たとえば東京も実はそうなんです。
一人暮らしということでいうと、東京はすでに全世帯の2軒に1軒が一人暮らしです。課題解決先進国になるためには、相当なチャレンジが重要になるでしょう。

●那覇市 真地(まーじ)団地自治会の場合

福祉をみんなのものにしなければ。

沖縄の自治会の例をご紹介したいと思います。

2010年12月27日の「沖縄タイムス」という地元紙の記事を読みます。
「一人暮らしのお年寄りの交流の場をつくろうと、真地団地(市営住宅)の自治会。真榮城嘉政会長は『百金食堂』と銘打った昼食会を開いている。毎週金曜日に開店し、参加者から100円を徴収。同自治会の婦人部やボランティアが食事を提供する。『みんなと食べるとおいしい』『おしゃべりが楽しい』と好評だ」。
これはどういう話か説明します。
真地団地は1981年にできて今年で40年目。5階建のエレベータなし、400世帯の住宅です。那覇市内の国際通りから最も離れており、バスがなくアクセスのよくない地域。だから、住民の方々はマイカーを持っていたんですが、高齢化で車を持つ人が減りました。駐車場代を払えない世帯も出てきて、車を手放す人も。
そこで自治会として車を購入し、乗り合わせて買い物などができるようにしたんです。最近の言葉でいうカーシェアリングを、1980年代からはじめていたそうです。そして、2011年に真榮城会長が地域福祉部を新設。上の階に住んでいる人が下の階へ降りたりするときに、おじいちゃんおばあちゃんが住んでる家をノックして見守りをする「第1次福祉計画」というのを実施。そのほか毎週木曜日には集会所でお茶を飲んで話す「ふれあいデイサービス」。その流れからみんなでご飯食べられたらいいよねということで、「百金食堂」をはじめたというわけです。
ところが「団地の集会所でお金をとって食事を提供する」するということに、市役所は「NO」と言った。やってはいけないと。
だけど真榮城さんは強行突破して開催したわけです。真地団地にはシングルマザーやおじいちゃん・おばあちゃんの一人暮らしなど、いわゆる生活困窮世帯が最も市内の中でも多く住んでいる世帯地域でした。
真榮城さんは言いました。「真地団地が一番孤独死率が高いんだろ。ここでやらないでどうするんだ。リスクは俺たちが負うからやらせろ」と。わかりやすく言うと規制を破ったんです。でも地域で何かを起こすとき、誰かがリスクを背負って、ある意味で規制を破ってでもやらなきゃいけいない必要性があるということ。
この活動を当時の那覇市長だった翁長さんは、市民の命を守らないといけないだろうと、すべての市営住宅にこの活動を広めていきました。交流よりも支え合いを自治会・町内会が担わないといけないほど、今の時代は福祉が身近な問題になってきています。家族が小さくなってきたということは、福祉をみんなのものにしなければいけなくなってきたということ。自治会というものは本来、住む人の命と暮らしを守るために生まれたのです。

●福祉の役割

地域の中から福祉に求められていることを見つけよう。

地域の方々にお話を伺うとよくこういうこと言われます。「行事を減らして福祉と防災と経済やらないといけない」と。なぜか。
子どもが多かった時代は、自治会は盆踊りや運動会などの行事をしていればよかったんだけど、高齢化と人口減少がダブルパンチで進んでいくと、住む人の安全・安心を守らないといけないから。
文化伝統も守らないといけないし、買い物難民を出すわけにもいけない。あるいはJAがなくなっちゃった地域が出荷もできなくなってしまう。
そうならないためにはどうすればいいのか。つまり自治会・町内会の役割は、イベントをやる時代から生活必須サービスをやる時代へ。つまり福祉です。このことを自治会でさえ担わないといけなくなっているんです。
なぜこのことをみなさんに伝えたかったかというと、福祉専門職に問われている専門性というのは、専業性ではないということ。
施設の内側から、あるいは自分たちがサービスの内側からだけ福祉を見るのではなく、地域の中から福祉に求められている専門性や技能を考えてもらいたいということです。

●平成の30年間に日本はどう変わったのか

地域も国も「このまま」じゃ、あぶない。

平成の30年間に、日本は3つ変わりました。
一つは家族が小さくなりました。三世代があたりまえだった時代から核家族を通り越し、一人暮らしがあたりまえの時代になってきた。
二つ目は働き方が変わりました。福祉職に関しては介護保険制度ができたことにより、2000年から福祉における介護の位置づけが大きく変わりました。
もう一つ大きいのは、第2次産業で働いている人も第1次産業で働いている人も福祉の仕事へシフトすることも増えてきました。つまり、土日休みの人の比率が下がってきたんです。福祉のように、24時間365日ケアが必要という仕事で働く人が増えてきたことで、地域で開催される週末の行事に若い人が参加できにくくなりました。
女性の就労比率も高くなり、共働きも増えてそれが福祉職だと、土日に運動会などを組まれるとツライですよね。
ちなみに沖縄では、月曜日の午前中限定で運動会をやるところが出てきたそうです。地域の持続性をどのように高めていくか。それが問題です。

それでは、これまでとこれからがどう違うか簡単に説明します。
人間の高齢化もそうなんですが、インフラとハコモノも高齢化しています。
どういうことか。現在の日本の財政がなぜ苦しいのかというと、これまで道路や橋や公民館などを建てるために一千兆円くらいの借金をしてきた。この借金を返し終わっていない状態で、法定の耐用年数である50年を迎えてしまい、建て替えないといけない時代に来てしまったんです。
つまり、人間の高齢化で介護にお金がかかるだけでなく、インフラとハコモノも高齢化して、大変なことになっているということ。2050年、2100年のためにどう財源の確保をしていくのか。今のままでは全然ダメなんです。

●高齢化「第2幕」

介護が必要な80歳代が急増し、介護する側の65歳〜74歳代が減っていく。

人口の7%を65歳以上の人が占めることを「高齢化社会」といいます。
そして、65歳以上の人が14%になると高齢化の「化」がとれて「高齢社会」。
21%を超えると「超高齢社会」と呼びます。ということは、2019年9月に28%を超えた日本は「超々高齢社会」です。なんとこれは、世界初なんです。
ちなみに、人口の7%を高齢者が占めるようになったのは1970年。だから今の70代、80代の人たちは、もう50年間もずっと高齢化という言葉を聞いているわけです。
だけど、これまでの高齢化とこれからの高齢化は「質」が違う。
2005年から2030年までの間に、65歳から69歳の人を5歳区切りで見ていくと、740万→820万→960万と増えてきて、ここから先が820万→710万と減っていきます。高齢者の中で減る年齢層が出てくる。
65歳から69歳の人のうち、要介護3以上の人は0.8%で、70歳から74歳でも1.7%。
つまり、65歳から74歳までの前期高齢者のうち要介護3以上の人というのは、100人に1人しかいないわけです。
いわば、元気高齢者です。
そしてこの人たちがまちづくりの主役になります。民生委員も町内会長もここが主力でしょう。
だけど、この主役たちの層が減っていくんです。ところが85歳以上の23.4%が要介護なんですよ。この層が増え続ける。
つまり、お世話されないといけない人は増えるのに、まちづくりのお世話をしてくれる主役はどんどん減っていくことが最大の問題なんですね。

●2020年以降のこと

今すぐ「これからの介護」にシフトしよう。

2040年には日本の人口の11人に1人が85歳以上になります。注意したいのは、この状態になるのは2040年が最初ではなく、2035年の時点で2040年とほぼ同じ状態になるということ。つまり、あとわずか15年しかありません。
85歳以上が1千万人を超えていく社会を、我々はどのように迎えるべきなのか。
75歳以上の一人暮らしは現在20.6%。後期高齢者が全体で1800万人。そのうち一人暮らしが380万人。つまり、75歳以上の5人に1人が一人暮らしです。
ただしこれは全国平均であり、地域により大きな振り幅があります。
たとえば日本海側の山口県や島根県は、まだ3世帯同居世帯率が高いため10%にも達しません。
ところが大阪や東京ではこれが40%近くまで上がるんです。なぜか。歩いていけるところにコンビニがある。バスで通院できる。つまり便利だから。
でも、通学する高校生が減るとバスは減ります。少子化は、後期高齢者単身世帯にとても大きなダメージを与えるんです。
今までおじいちゃん・おばあちゃんが安心して暮らせると思っていた都心部ほど問題は深刻。

就業構造の変化を見ましょう。
2015年から2035年までの間に、もしすべての年齢層の就業率が同じだった場合、約200万人もの働く男性が減ることが予想されます。女性だと約260万人ほど減ってしまいます。
このことを念頭に置いて業種別に見ていくと、1995年から2015年の間で分類されている業種で最も増えたのは男性・女性ともに「医療」と「福祉」。でも2015年から2035年までの間に85歳以上の人が倍に増えるため、介護需要も倍に増えますよね。ところが2035年では介護を担ってくれそうな人は15%しか増やせなんです。なぜなら、人口がものすごい勢いで減っているから。
どうすればいいのか。介護の生産性を20年間で85%上げなければいけないということになります。
もはや人の力でなんとかするという段階は超えています。AIやロボットをあたりまえに使いこなせる職場にしていかないと、もう太刀打ちできません。
前回この場所でご登壇された秋本さんのお話を聞いてなるほどと思ったんですが、人の定着も深刻だけど経営できていないということが何よりも深刻だと思うんですよね。
働き続けたいと思える職場になっていなければ現場はもちません。だから、社長や経営者の方々が「進化していくこと」や「新しい挑戦をすることに前向き」かどうかがすごく重要。
みなさんも、就活するときにはぜひこのことに気をつけてください。

需要はどんどん増えるのに供給が追いつかない。もう昔の経験なんて通用しません。
利用者は爆発的に増えます。2000年の時点で介護保険の利用者は218万人でしたが、現在では658万人くらいまで増えています。これが2040年になると、要介護認定率を若干下げたとしても900万人くらいに拡大する見込みです。
ここから先、要介護認定を受けている人数は300万人くらいしか増えないのですが、問題は85歳以上の比率がどんどん上がっていくことにより、要介護3以上の人がほぼ倍ぐらいになること。特養をはじめとする施設は、キャパシティーを倍にする前提で考えないといけません。
ちなみに要支援1以上の一人当たりにかかるコストは160万円ほどです。介護保険制度の適用を受けている人にかかってる費用は一人162万円。これが2040年には厚生労働省の目算でいくと270万に。なぜなら要介護度が上がるからなんですよね。
福祉に求められる思想や理念、ケアの心がけは同じでも、現場の運営に求められるスピード・効率・スキルが昔と今とでは全然違うということです。

●これからの介護に求められること

介護を先頭に、課題解決先進国へ。

みなさんが福祉の仕事に就き2040年を迎えると、年齢的に中堅や経営者層です。
その頃にはこれまでお話ししてきたケアやニーズがあたりまえになっています。
これからの介護には、運営力やマネジメント力というものが今まで以上に強く求められると思います。効率よく、組織とサービスを持続できなきゃいけない。そのために、利用者さんに関する情報収集・分析・判断。そしてそれを家族や地域と共有したり、たとえば一人暮らしのおじいちゃん・おばあちゃんを支えていく協働や、人材の育成に関しても行政の職員さんたちよりも早く取り組んでいく必要があるでしょう。
日本人だけでは無理があります。外国の人たちに働き続けてもらう職場づくりも必要。これからは医療の伸びしろより、介護の伸びしろのが大きい。だからこそ、医療機関が福祉もやるのではなく、福祉・介護を経営してる側が、医療機関も併設するという時代になってきます。
世界に前例はありません。最も早い超々高齢国に私たちはいます。課題解決先進国になることを、本当に期待しています。


[ゲストプロフィール]

IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人氏
1964年大阪生まれ。87年に京都大学卒業後、(株)リクルートに入社。
広報や国際採用などを担当して91年退社。その後、国際青年交流NGOの日本代表や国会議員の政策担当秘書などを務め、94年にIIHOE設立。
市民団体のマネジメントや、企業の社会責任(CSR)への取り組みを支援するとともに、NPO・市民団体と行政との協働の基盤づくりを進めている。
また、地域自治組織の先進地である島根県雲南市の地域自主組織制度を、2006年の立ち上げ当初から支援するなかから「小規模多機能自治」の推進を提唱。同市などの呼びかけにより15年に設立された「小規模多機能自治推進ネットワーク会議」には250以上の自治体が参加し、農山漁村部だけでなく、今後は都心部でも急速に進む高齢化や人口減少に備えた住民自治や地域経営のあり方を、ともに学んでいる。
https://blog.canpan.info/iihoe/

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