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2022.02.21

カイゴの業界研究セミナー レポートvol.7|教えて先輩!ケアのしごとを選んだ理由

就活生を対象に開催された「カイゴの業界研究セミナー」の続編。
今回は「教えて先輩!ケアのしごとを選んだ理由」として、「社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋」で介護職として働く島野さんから、就活で見るべきポイント、現在の仕事を選んだ理由、実際の仕事、働いて感じていることなどを、等身大で語っていただきました。

 講師紹介 

社会福祉法人 リガーレ暮らしの架け橋 ケアセンターおんまえどおり社会福祉士 島野莉奈 さん

入居者と地域をつなぎ、住み慣れた町でなじみの人たちに囲まれて暮らし続けるサポートをしている法人・リガーレ暮らしの架け橋。そんなリガーレで働きながら、日々の支援にあたっている若手職員が登場。

社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋WEBサイト(地域密着型総合ケアセンターきたおおじ)

 レポーター紹介 

看護師ライター・町田 舞 さん
新卒でシステムエンジニアとして就職し、うつ病・休職を経験し退職。その後フリーターを経て介護職から看護師となり、フリーランスに転身。現在は訪問看護師としても働きながら、医療福祉事業のウェブ・広報業務や、看護メディアでのライター活動、ブログ・SNS発信などパラレルキャリアとして活動中。

はじめに~自己紹介~

私は大学で社会福祉学を専攻し、社会福祉士の資格を取得しました。大学卒業後、リガーレ(社会福祉法人リガーレ暮らしの架け橋)に就職(現在3年目)し、現在はリガーレの「ケアセンターおんまえどおり」の小規模多機能型居宅介護にて、介護職をしています。

大学では、3年生のときに小規模多機能型居宅介護、4年生のときに複合型施設(デイサービス、特別養護老人ホーム、ヘルパー、認知症予防教室など)で実習を経験しました。
今回は、私が就職前に感じていたことや就活でこの仕事を選んだ理由、就職してから感じていることや実際に現場でしている仕事について、お話しさせていただきます。

就活時の「見るべきポイント」

私が就職先を絞るときにしたことは「自分の人生を振り返り、自己流の見るべきポイントを決める」ということでした。

具体的には、今までの人生を振り返って、「居心地がよかった環境」「楽しかったこと」「人生で譲れないもの」などを書き出していきました。そして「なぜそうだったのか?」「なぜそう思ったのか?」と深掘りをして、そこから就活で自分なりの見るべきポイントを絞っていきました。

私が絞ったポイントは、
 1.管理職の女性率が高い
 2.目標を持ち続けられる、どんどん新しいことをする雰囲気がある
 3.おしゃれができる
 4.現場の方の外部の人への態度
でした。

たとえば「1.管理職の女性率が高い」は、「居心地が良かった環境」を振り返ったときに、私は実習先(施設)やアルバイト先(雑貨屋)で居心地がいいと感じたんです。それを深掘りして「なぜか?」と考えたとき、実習先の施設長も女性、アルバイト先の店長も女性で、女性が上にいるチームは働きやすい・環境が色々な面で整理整頓されているからではないかと感じました。

また、「3.おしゃれができる」は、メイクをしたり着たい服を着たりできることが、自分にとって気分のオン/オフの切り替えにつながるので大事にしたいなと思いました。そんなふうに、自分なりに見るべきポイントを決めて就活に臨みました。

しっかりと自己分析をして、希みを明確にしての就活…!
他人に言われたことではなく、自分の軸をきちんと持ってポイントを定めるって大切ですね!

「福祉の仕事」を選んだ理由

そんな中で私が福祉の仕事を選んだのは、「一緒に働く“人”を最も重視したから」の結果でした。社会福祉学科で福祉の勉強・実習もしましたが、福祉の仕事をやると決めていたわけではなく、就活では民間企業も含め、興味のある企業の説明会には業種を問わず積極的に参加しました。

その中で、たとえば面接担当の人の言葉や表情に目を向けて、説明会の資料から「どれくらい考えて準備してくれたんだろう?」「どういうふうに育ててくれるんだろう?」と想像したり、自分の心に響くか?を自分に問いかけてみたりしました。そして、説明会や面接の待ち時間などにどんな声かけをしてくれるか、などにも目を向けて、「自分はここにいる人たちと一緒に働きたいか?」を考えていきました。そうしていく中で、福祉の方々の寄り添ってくださる言葉に心が温まったことが大きな決め手になりました。

また、実習を振り返ってみて高齢者施設での実習が一番、自分が自分らしくいられたと思いました。高齢者の方との関わりが私には合っていると感じたし、「相手に対して、自分は何ができるか」を前向きに考えられたんです。それで「福祉を仕事にしよう」と気持ちが定まっていきました。これは実際に経験してみないと分からないことなので、何事も経験が大事だと思います!

(自分が就活のときは、こんなに深く考えたり行動できてなかった…!す、すごい…!)
実習を通して自分で体験したり、就活でもたくさんの業種・法人を実際に見たり、現場の人の声を聞いたり…「数」と「質」の両面からしっかりと分析・経験をされたからこそ、納得のいく選択ができたんでしょうね!

「今の仕事(リガーレ暮らしの架け橋)」を選んだ理由

数ある福祉の仕事・法人の中からリガーレを選んだ理由はいくつもあるのですが、まずリガーレは“上位認証法人”といって、京都府内で人材育成などについて基準を満たしている法人だったので、基盤がしっかりしていて安心して働けそうだと思いました。また、私が実習を通して働きたいと思った小規模多機能型居宅介護サービスがあったことや、実際にリガーレで実習をした際に良いと感じたことも大きかったです。

他にも「自分の入社と同じタイミングで新しい施設が開業する」「先進的計画がたくさんある」「自分が大学時代に頑張っていた“地域活性化”が続けられると思った」「若い職員が多く親しみやすそう」「女性の管理職率が高い」「職員の服装が“利用者の生活に馴染むように”と自由だった」など様々なポイントがありました。

また、細かいところだと思われるかもしれませんが「食器がプラスチックじゃない」というのが私にとっては大きなポイントでした。リガーレでは割れないようにプラスチックに…ではなく、「おいしく見えるように、食べてもらいやすいように」と普通の食器を使っていて、そういう考えも私には合っていました。

そういった自分の中でのポイントは最初から全部決まっていたのではなく、複数の法人を見ていく中でいいなと思ったことを挙げていくうちに増えていきました。それを、候補先で一つひとつ確認して、該当するものがあったら+1ポイント、みたいにポイント制で見ていきました。そうして一番魅力的で選んだのが現在働いているリガーレでした。

実際に働いてみて~介護の現場や地域での仕事・活動~

そんな就活を経てリガーレに入職し、介護職としての仕事が始まりました。

仕事は、利用者様から「ありがとう」「きぃつけて帰りよしや(気をつけて帰りなさい)」などと温かい言葉をかけてもらったり笑顔に囲まれながら働けていて、幸せを感じています。また、現場の仕事以外にも自分のやりたいことができ、とても楽しいです。

仕事の一部を紹介すると、たとえば利用者様が「ユニクロに行きたい、100均に行きたい」などと言われたときに、一緒にイオンへ買い物に行くなど、“ひらけた支援”をしています。他にも一緒におはぎづくりなどをして、(利用者様の)家事能力や持っている力を活かした支援や、季節を感じられるよう忘年会を開催しています。

介護の現場以外では、リクルート活動として、学生さんに介護・福祉について話す機会をいただいたり、「地域」対「利用者」だけではなく、「地域」対「施設」の関係づくりのために、地域とつながる企画の立案をさせていただいたり、研修を通して介護技術の向上やケアについての検討なども行っています。

そうやって、現場でも現場以外でも様々な活動をさせてもらえることで、利用者様の支援をより幅広い視野でみることにもつながっています。

一定の領域だけで働いたり決まった人とばかり関わっていると、視野・考え方が固定化されやすくなりますが…組織内外問わず色々な仕事や活動をして、多様な関わりを持つことは視野を広く持つことや考え方を柔軟にすることにつながりますね。

現場で得たことを現場以外で発揮して、現場以外で得たものを現場に活かす…素敵な循環です!

事例~多様な人で支える暮らし~

ここで利用者様への支援の一例を紹介します。

90代のTさん(女性)は要介護3で、自宅で一人暮らしをしています。日常生活では歩行器(押し車)を使ったり、伝い歩きで移動をされています。安全のために施設入所も勧めましたが「お父ちゃんとの大事な家だからここで暮らす。お風呂も家で入りたい」「自分のことは自分でする」と言っていました。

家事の仕方や物の置き場所にこだわりがあって、安全に生活できているならそれでもいいのですが、動線が確保できていなかったり、衛生面での心配があり、徐々に歩行状態も不安定になっていきました。転倒したり、服薬を忘れたり、自分で料理をすることに自信が持てなくなったりと状態が変化していきました。

そんな中で、Tさんに対して、様々な職種や地域の人で関わりました。たとえば、服薬の支援は私たち介護職だけでは難しいため、往診や訪問看護との連携・情報共有などを行いました

また、介護福祉の支援以外でも、Tさんには周囲の人々の様々な支えがありました。歩行が難しくなったことで通えなくなった近所の行きつけの喫茶店の方がお弁当を配達してくださったり、楽しみにしていた絵手紙教室は、先生が近所に住んでいて車椅子で迎えにきてくださったり、行きつけの美容院は電話をすると車椅子で送り迎えをしてくださったり…Tさんが好きなお店に通うことや趣味活動は、近所の方のつながりによって継続されています。

他にも、ご近所の方がゴミ捨てを手伝いに来たり、ときどき電気メーターを見て生活されているのを確認してくれたりもしています。介護に携わっていると、一人の人の生活が専門職だけではなく、地域にある資源(近所のお店、人など)によって支えられていることを学ぶことができます。

終わりに~伝えたいこと~

最後に、介護の仕事は「毎日が違って、難しくて、でもその分、可能性を秘めていて、面白い仕事」だと私から皆さんに伝えたいです。
介護の仕事はきっと皆さんが想像しているよりも、何倍も仕事の幅が広くて、彩り豊かなものだと私は感じています。

私が就活しているときは、社会福祉士を活かして相談員としての就職も考えたし、家族にも「介護の仕事をやるの?」と心配そうに言われたこともあり、介護職に就くことを決心するのに勇気がいりました。でも実際に3年働いてみて、学生時代の実習で「自分らしくいられた」という自分の体験や気持ちに、介護の現場で働くことを選んで正直に良かったと思っています。

新卒から相談員になったとして、果たして相談を受けて解決の提案ができていたかと考えると難しかったかもしれません。今こうして現場に入って働いているからこそ、体感できていることがたくさんあります。今だからこそ、相談員になってできることがあるかもしれないですが、現場で一番最初に働くことを選んでよかったと思っています。

介護のイメージは色々あると思いますが…決して誰でもできる仕事ではありません。私は「介護は専門職」だと自信を持っています。幅広い視野が必要だし、人生の最期に携わる責任がある仕事です。だからこそ、これからもたくさん勉強していきたいと思っています。

ぜひ色んな方に介護の仕事を、インターンなどを通して実際に体験してみてほしい。そして一緒に介護の仕事ができたらいいなと思っています!

島野さんの情熱・信念がひしひしと伝わってきます!

毎日が違って、難しい。だからこそ面白い。合う仕事は人それぞれだと思いますが、島野さんが言うように、興味がある仕事は実際に体験して、その魅力を知ってもらえたらいいですよね…!

学生からのQ&A

介護の仕事はきついイメージがあり、夜勤で体調を崩さないか?などが心配です。就活で、勤務形態はどうやって選んだらいいでしょうか?また勤務時の工夫でやっていることなどあれば教えてください。

介護でも提供サービスによって勤務形態が違ってきます。入所施設だと夜勤がありますが、デイサービスなら日中だけの勤務で夕方に終わるなど体制が違うので、自分に合うところを選ぶといいと思います。

私の場合は、小規模多機能(入所型)なので夜勤があります。私も最初は不安があったので、先輩に夜勤の過ごし方を聞いたり、色んな過ごし方を試したりしていく中で少しずつ順応していきました。たとえば、「夜勤の出勤の時間までギリギリ寝ているほうがいいのか?」「昼からは起きて活動しているほうが動きやすいか?」など色々と試しました。働いてからでもいい方法は見つけられるので、色々と工夫していくと良いのではないでしょうか。

学生時代の実習先からすでに“高齢者福祉”に絞られていましたが、選んだきっかけや理由があれば教えてください。

私の大学では3年時に専攻分野のゼミ選択が必要でした。
なので、そこまでの間に分野を絞っておく必要があり、実際に自分で色んな福祉活動に足を運びました。大学に様々なボランティア情報が集まっているので、そこから児童・障害者・高齢者に関わるボランティアに参加しました。その結果、私の場合は高齢の方と話しているのが一番楽しかったので、そのフィーリングを大切に高齢者福祉を選びました。

私は相談援助の勉強をしており、介護の技術が全くありません。相談援助職で就活をしても、働いて最初はケアワークから入ることもあると思います。そうなると、技術がないことが弱みになるのでは?と不安があります。面接でその弱みをどうカバーしていけばいいでしょうか?

私も社会福祉士の勉強をしていたので、介護技術がないまま現場に入って、入職してから研修を経て技術を習得していきました。他にも経験がない人もいると思うのでスタートラインは一緒だと思います。就活では、研修が充実しているところを選ぶと良いのではないでしょうか。会社説明や面接のときに研修内容について質問して、安心して働けるところを選ぶと良いと思います。


介護の現場で働く先輩の「ケアのしごとを選んだ理由」いかがでしたか?就活時の「自己流の見るべきポイントを決める」ところから実際の仕事を選ぶ過程、働いてからの経験…ご自身の仕事選びにも活かせる部分があったのはないでしょうか。この記事が、読んだ人にとって“自己流=自分らしい仕事”を見つけるヒントになれば幸いです。

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