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2022.01.25

カイゴの業界研究セミナー レポートvol.6|最期まで、自分らしいくらしをつくる~看取りを通して学ぶ「その人らしさ」の支え方~

「最期まで、自分らしいくらしをつくる」をテーマに開催された、第3回【カイゴの業界研究セミナー】。
今回紹介するのは、地域で介護サービスを利用しながら最期を迎えた高齢者と、それを支えた介護職の事例。
介護・福祉に携わる人にとって、「看取り」は避けては通れません。そんな中で、最期を迎える人を支えるためにできることは?それを取り巻く家族や介護職の想いとは?
社会福祉法人 リガーレ暮らしの架け橋の介護職員のお二人から、その想いを語っていただきました。

 講師紹介 

社会福祉法人 リガーレ暮らしの架け橋・若手職員のお二人
地域密着型の施設で、日々の支援にあたっている若手職員が登場。入居者と地域をつなぎ、住み慣れた町でなじみの人たちに囲まれて暮らし続けるサポートをしている。
https://www.kitaooji8025.jp/

 レポーター紹介 

看護師ライター・町田 舞 さん
新卒でシステムエンジニアとして就職し、うつ病・休職を経験し退職。その後フリーターを経て介護職から看護師となり、フリーランスに転身。現在は訪問看護師としても働きながら、医療福祉事業のウェブ・広報業務や、看護メディアでのライター活動、ブログ・SNS発信などパラレルキャリアとして活動中。

リガーレとは

リガーレグループは5つの法人(リガーレ暮らしの架け橋、北桑会、六心会、宏仁会、はしうど福祉会)からなるグループ法人です。一つ一つの法人は大きくはないですが、グループで協力し合い、知識や技術の研修・経験の共有などを行い支え合っています。

私たちが働く「リガーレ暮らしの架け橋」は、リガーレグループの本部。運営部門と開発部門に分かれ、開発部門では人材開発研究、運営部門では特別養護老人ホーム(以降、特養)・小規模多機能居宅介護・サービス付き高齢者向け住宅(以降、サ高住)などの高齢者向け施設の運営を行っています。

地域密着型総合ケアセンターきたおおじとは

私たちが働いている「地域密着型総合ケアセンターきたおおじ(以降、きたおおじ)」では、「住み慣れた地域で暮らし続けることを支える」「すべての世代が集まり出会う広場に」「利用者の尊厳保持の実現を目指す」という3つの理念を掲げています。

■地域密着型総合ケアセンターきたおおじ」の活動の一部を紹介

地域交流サロン 「喫茶」や「いきいき教室」を開催。地域に住む高齢者を対象に、お菓子づくり・体操教室・レクリエーションなどを行い、介護予防や社会参加の機会を増やす活動をしています。
小規模多機能型居宅介護 定員29名。介護が必要な方に、通所・訪問・宿泊の3つのサービスを組み合わせて提供。どんなサービスでも自由に行えるわけではなく、(制度の範囲内で)その人に必要なサービスを必要な分だけ提供していきます
ショートステイ 在宅で生活している方に、短期間の宿泊サービスを提供。これには本人だけでなく、介護をするご家族の負担を軽減し支える一面があります。
地域密着型特別養護老人ホーム 常に介護が必要な方・自宅で生活することが難しい方を24時間365日、介護職員を中心に、相談員、看護師、管理栄養士など複数の専門職で支える施設。
サービス付き高齢者向け住宅 高齢の方が住む安否確認と生活相談つきの住宅サービス。介護が前提ではなく生活のための施設のため、介護サービスは必要な場合に別途利用する形となりますが、きたおおじでは小規模多機能型居宅介護が併設されているため、併せて利用されている方が多いです。

この5つのサービスがあることで、元気なうちから地域交流サロンでの交流・相談を経て、介護が必要となれば施設を利用していただき、「出会ったときから、最後まで」その人が地域(住み慣れた場所)で生活できるよう支えています。そうして私たちは日々、地域とのつながりを意識しながら働いています。

地域の中で、複合的に介護・福祉のサービスを行われているんですね。
介護が必要になってから…ではなく、健康なうちから交流を持てる機会があることで、その後何かあったときの安心や信頼にもつながりますよね。

■事例1
<サービス付き高齢者向け住宅/小規模多機能型居宅介護での看取り事例:Aさん・男性>

Aさんは、元々は東京に住んでいましたが、年齢・病気・体調などから、娘さんの自宅に近い、きたおおじのサ高住で一人暮らしを始めました。

ご家族との関係は良好で、毎日のように娘さんが面会に来ていたり、お婿さんやお孫さんも頻繁に面会に来られていて、ご家族の写真を部屋に飾ったりしていました。当時は介護の必要もなく、食事の配膳や入浴前の血圧測定など、見守り程度のサービスを提供していました。サ高住のひのき風呂や職員を気に入り「ここはいいところだ」と喜んでくれていました。

Aさんは、ご自分がしていた仕事に誇りを持っており、「若い人に色んなことを教えたい・育てたい」という想いを持っている方でした。

私は、そんなAさんには何度も怒られたことがありました。印象深かったのは、ある日の定期訪問のときのこと。外からドアをノックしても、声かけをしても返答がなく、中に入ってみるといつものように部屋で過ごされていたので声をかけたところ、「勝手に入って来るな、出ていけ」と怒られてしまいました。
サ高住は、介護施設ではなく住居。職員であっても、許可なく入ってはならないことを思い知らされました。Aさんが持つ「厳しさ」から学んだ教訓でした。

そこって、すごく線引きが難しそうですね…。
サ高住は生活の場であるのと同時に、見守り・生活支援の側面もある場なので、安否確認も大切ですよね。一人一人の考え方を尊重した関わり方を考えさせられますね。

そんなAさんがあるとき、脳梗塞で倒れて救急搬送されました。一命は取り留めましたが、身体には麻痺が残り、生活のほとんどに介護が必要な状態になりました。サ高住では受け入れが難しい状態になりましたが、本人やご家族から「きたおおじで最期まで過ごしたい」という希望があり、サ高住に戻り小規模多機能型居宅介護などを利用しながらAさんを支えていくことになりました。今まで通りの生活とはいきませんが、痛みや不快感などの本人の負担を少なくする方法、Aさんの「その人らしさ」を支えるためのケアをチームで検討しながら関わりました。

具体例を挙げると、一人で入浴が難しくなったAさんに機械浴(※寝たきりの方が、ストレッチャーなどで介助つきで入るための浴室)で介助をしながら入浴をサポートしていました。ですが、機械浴では「痛い、寒い」と辛そうな反応がありました。そこで以前、きたおおじのひのき風呂が好きだったことを思い出し、ひのき風呂に入れるよう工夫してサポートしたところ「気持ちがいい」と喜んでくれました。

そんな中で、私はAさんに「かかわらないでくれ」と言われることが何度もありました。その都度、原因を考え謝罪もしましたが、その後も拒否されることはありました。

そこで気付かされたのが、私は「いつもどんなときも笑顔で、その人に優しく接すること」を心がけていたのですが、Aさんからは「自分はしんどいのに、ヘラヘラしている」という態度にみられていたのではないか、ということでした。Aさんはプライドも高く、介護を受けることへの抵抗も大きかったと思います。そこで「いつも笑顔で接すること」が必ずしもいいわけではないのかもしれない、自分は相手に寄り添おうとしていなかったのかもしれない、と反省し、それからは相手の気持ちを考え誠実に丁寧に関わるよう心掛けました。その後も常にいい反応があったわけではないですが、「ありがとう」と言っていただけることも増えました。

明るい笑顔に励まされる人もいれば、その明るさを辛いと受け取る人もいる。

どう接するのが正解だったのか、答えは分かりませんが、考えて寄り添う想いや姿勢は、Aさんに伝わっていたのではないでしょうか?私も看護師として、その人らしさを尊重した関わりができているか…日々、より深く考えていきたいと思いました。

その後、Aさんは徐々に状態が悪化し、最期は家族に見守られながら、きたおおじのサ高住で最期を迎えられました。
良い看取りになったのかは分かりませんが、気に入ってくださっていた、きたおおじの中で家族に見守られながらの最期を迎えられて、本人・ご家族の想いを支え、叶えることができました。

最後の最後まで「若い人を育てたい」という想いを持っていたAさんから、私はたくさんのことを学びました。そして「その人らしさを支える」ということを、チームで考えさせられた事例でした。

■事例2
<ショートステイでの看取り事例:Tさん・男性>

Tさんは京都生まれ京都育ちの男性で、奥様の介護負担の軽減のために、きたおおじのショートステイの利用を開始されました。

面接の段階では無口で、物静かな寝たきりの方という印象でしたが、ショートステイを利用するようになってからは、実はおしゃべり好きでユーモアのある明るい人だということが分かってきました。

そんなTさんは、初回のショートステイ利用時には、生活のほとんどをベッド上で過ごしていて、食事・トイレなども介助が必要な状態でした。ですが、1週間ショートステイで過ごして自宅に戻ったあとに奥様から「ショートステイから帰ってきたら、普段しないことができるようになっていてビックリした」と連絡がありました。

ショートステイ中、私たちはTさんに「これはできるんじゃないか?」と可能性を考え、スプーンを渡して食事を摂ってもらったり、少しでもできそうなことを探してやってもらったりしていました。その結果、最初の1週間だけで変化があり、その後定期的にショートステイを利用され、できることが日々増えて活発になっていきました。本人が変化したことで、奥様からも「自分の用事をする時間が増えて助かっている」と言っていただき、ご家族のサポートにもつながっていることを感じました。

本人ができそうなことに目を向けて、実践してもらうことで意欲や自信につながり、できることが増えていった…。素敵な事例ですね。
本人もご家族も、日々元気に活発になっていったことが伝わってきます!

Tさんはその後、2年ほどショートステイを定期利用されてましたが、徐々に状態が変化し「老衰で自然に最期のときを迎えつつある状態」になっていきました。

そのとき、「このままでTさんを受け入れ続けることができるのか?」「きたおおじに来ること自体が負担になるのでは?」「利用中に息を引き取ったら、ご家族は納得できるのだろうか?」「家族と(自宅で)過ごすことがTさんのためなのでは?」とチームで葛藤し話し合いました。

ですが、ご家族から「きたおおじがあるからこそ、Tさんの世話を頑張れる、最期まで支えられる」「きたおおじで何かあったとしても、覚悟はできている」と言っていただき、最期までその想いに応えて、できることで支えていこうということになりました。

Tさんやご家族にとって、きたおおじの存在が身体的な支え(介護)だけでなく、大きな心の支えにもつながっていたんでしょうね。
深い信頼関係があったからこそのご家族の言葉、心に沁みます…。

その後、ある日のショートステイ利用予定の朝、奥様から「微熱があるので、(ショートステイには行かず)自宅でゆっくりします」と連絡があり、Tさんはその日の夜にご家族に看取られながら最期を迎えられました。

最期の看取りをした事例ではありませんが、「最期まで住み慣れた地域で、これまで暮らしてきた自宅で過ごしたい」という本人と、それを支えるご家族のために、ショートステイを通して寄り添えた…そんな新しい支え方を教えてもらった事例でした。

学生からのQ&A

介護職は専門知識が必要だと感じています。リガーレでは、全く知識がない場合でも、介護職として就職して活躍できるサポート・研修はありますか?

私自身も元々介護の知識はほとんどありませんでした。ですがリガーレでは研修制度があり、ステップアップできる体制があったため、入社して困ることはなかったです。
また、介護の技術には経験が必要なので、現場で繰り返していくことで徐々に身に付いていきます。「その人らしさを見る」ことが大切なので、その心がある人ならやっていけると思います。

コロナ禍で、リガーレグループではどんな交流が行われていますか?

研修は、オンライン(リモート)が増えましたね。職員の採用活動・情報共有などもオンラインで行われています。


地域の中で迎える最期、それを支える介護。その人らしさを支えることの難しさと大切さ…。
事例を通した「看取り」のお話しを聞いて、あなたはどんなことを感じましたか?この記事が、読んだ人にとって、人それぞれに違う「その人らしさ」「自分らしい暮らし」を考える機会になれば幸いです。

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